憲法13条 幸福追求権 

憲法13条

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 

幸福追求権の法的性格

憲法13条の幸福追求権は、人格的生存に必要な権利、自由を包摂する包括的な権利であり、個別的人権との関係では一般と特別法との関係に立ちます。また、具体的権利性と有すると考えるのが通説・判例です。【H14地上、H18地上】

憲法は14条以下で、守らなければならない人権を具体的に書いてありますが、憲法自体が古いので(戦後にアメリカのマッカーサーが作ったものかな?)、日々進歩していく現代社会のすべてを網羅はしていません。そこで、憲法13条の幸福追求権を根拠に新しく、現代社会にあった人権を作っていってるという感じです。

幸福追求権によって保障される人権

新しくできた人権で試験に関係があるのが①肖像権②プライバシーの権利③自己決定権④環境権⑤パブリシティ権です。

ただ、③自己決定権④環境権を正面から認めた判例はありません!

 

①肖像権

判例 京都府学連事件(最大判S44.12.24)【H18地上,H24国2】

事案学生運動のデモ行進した人達を、デモの許可違反をした可能性があるので警察官が写真撮影しました。撮影された学生が、勝手に撮ってんじゃない(# ゚Д゚) と訴えました。

争点:肖像権は憲法上保障されるか?

結論:容ぼう等を承諾なしに撮影されない自由(肖像権)は憲法13条で保障される。ただ、警察官の撮影は違法ではない。

判旨:①何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する。警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し許されない。②しかし、現に犯罪が行われもしくは行われたのち間がないと認められる場合であり、しかも証拠保全の必要性緊急性があり、かつその撮影が一般的に強要される限度をこえない相当な方法の時は、本人の同意がなく裁判官の令状がなくても、警察官による撮影は許容される。③また、近くにいた第3者である個人の容ぼう等を含むことになっても、憲法に違反しない。

肖像権は憲法で保障されるけど、緊急の場合とかは警察に撮影されても仕方ないでしょ!近くにいる人も写るでしょということです。 

プライバシー権

プライバシーは、普段よく耳にする言葉だと思います。プライバシーを守る権利は憲法で保障されています。プライバシー権は、①他人から自分の私生活を見られたくないことと ②自分の個人情報等を自分自身でコントロールすることが含まれます。

 

判例 前科照会事件(最大判S56.4.14)【H18地上,H19国Ⅱ,H21国Ⅱ,H24国Ⅰ

事案:京都市弁護士会からの問い合わせ対して、ある人の前科及び犯罪歴を報告したため、プライバシーの侵害や(# ゚Д゚) と訴えました。

争点:自己の前科や犯罪歴を知られたくない権利は憲法上保障されるか?

結論:法律上の保護に値する。

判旨:①前科及び犯罪歴は人の名誉、信用に直接かかわる事項であり、前科等のある者もこれとみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有するのであって、市町村長が、本来選挙資格の調査のために作成保管する犯罪人名簿に記載されている前科等をみだりに漏洩してないけない。②市区町村長が、漫然と弁護士会の紹介に応じ、犯罪の種類、軽重を問わず、前科等のすべてを報告することは、公権力の違法な行使にあたる。

たとえ弁護士会から聞かれても、市役所で管理している前科を回答したらダメですよ

 

判例 江沢民早大講演会参加者名簿提出事件(最大判H15.9.12)【H19国Ⅰ,H21国Ⅱ,H24国Ⅰ,H28国Ⅰ

事案:早稲田大学主催した江沢民(当時中国国家主席)の講演会において、警察から警備のために要請を受けた大学が、同意を得ずに学籍番号・氏名・住所・電話番号を提出された学生達が(# ゚Д゚)訴えました。

判旨:学籍番号・氏名・住所・電話番号は大学が個人識別等を行うための単純な情報であって、」その限りでは、秘匿されるべき必要性が必ずしも高いものではないが、このような個人情報についても、本人が自己の欲しない他者にみだりに開示されたくないと考えるのは自然なことであり、その期待は保護されるべきとして、これらの情報を無断で警察に開示した大学の行為は、学生らが任意に提供したプライバシーかかわる情報の適切な管理についての合理的な期待を裏切るものであり、学生らのプライバシーを侵害するものとして不法行為を構成している。

大学はきちんと本人の同意をとるべきだったなって感じです。 

 

判例住基ネットプライバシー権最判H20.3.6)【H21国Ⅱ,H24国Ⅰ

判旨:住民基本台帳ネットワークシステムにより行政機関が住民の本人確認情報を収集、管理又は利用する行為は、当該住民がこれに同意していないとしても、憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではない。

 僕らがなんといっても市役所とかの行政に情報を管理される時代なんですね~

③自己決定権

自己決定権は、自分の大切なことは自分で決めよう!というあたり前のような権利です。この権利が憲法でも保障されているかという内容です。自己決定の対象には①医療拒否(エホバの証人輸血拒否事件)、尊厳死安楽死②結婚、離婚、避妊、中絶③髪型、服装、喫煙などがあります。エホバの証人輸血拒否事件のように、大切な内容を自分で決めることは人格権の一内容として尊重されなければなりません。ただ、自己決定権を正面から認めた判例はありませんので、試験では注意が必要です。

判例 エホバの証人輸血拒否事件(最判H12.2.29)【H17国Ⅰ,H24国Ⅰ

事案:宗教上の信念から、絶対輸血しないで欲しかった患者が手術後に自分が輸血されたことを知り勝手に輸血してじゃない(# ゚Д゚) と訴えました。

判旨:患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならない。よって、了承なしの輸血は、人格権の侵害であり不法行為が成立し損害賠償義務を負う。

輸血することが宗教上の根本に関わり絶対したくない人には、輸血をする可能性があることをきちんと説明しなけらばならなかったのです。あとは患者に決めてもらうしかないですね